福島県富岡町は、2011年の東日本大震災及び原子力災害によって一時は全町避難となり土地を追われました。

避難指示により土壌は長く休耕状態が続き、同時に福島県産農産物に対する風評被害も未だ残る中で、農地を守り、農業を再生させるその一途な思いで、町内の農家は試験栽培・実証栽培を実施。避難先から何度も足を運び、震災から7年後の2018年にようやく通常の水稲作付けが慣行出来るようになりました。

富岡町産米使用日本酒「萌の躑躅」、「富岡魂」の原料となる米の生産者・渡辺伸(わたなべ のぼる)さんは、富岡町で5代続く農家として町の農業を守っている一人です。震災と原発事故により7年間の避難生活を送り、2017年に富岡町の避難指示が(一部を除き)解除されてからは、避難先と富岡町を行き来しながら農業を行っています。

「先祖代々続いてきた農地を、自分の代で途絶えさせるわけにはいかない」と、農業を再開した渡辺さんですが、原発事故後に除染され、新しい山砂を入れた農地は土地が弱り、すぐには以前と同じような農業はできませんでした。
東京農工大学や福島大学などと連携し、土壌や肥料の実証実験や有機栽培の生産技術の開発などを行った結果、3年後の2019年には酒を醸造するのに適した米の生産にこぎつけました。

「萌の躑躅(きざしのつつじ)」の原料となる米「桜福姫」は、東京農工大学の協力を得て土壌の栄養分調査、品種改良などを行って開発されました。
また、「富岡魂」の酒米は、福島県が4年かけて開発した新しい酒造好適米「福乃香」。渡辺さんの営農再開の功績が福島県から認められ、富岡町は、福島県浜通りで唯一「福乃香」を生産している町です(2022年現在)。

「自分はただ、確かな米の生産を続けるだけだが、その米でつくった日本酒で富岡町が元気になるのなら、それは非常にうれしい」と控えめに話す渡辺さん。
とみおかプラスでは、東日本大震災と原発事故を乗り越え、富岡町内で営農を再開した農家の思いを受け止め、富岡町産米にこだわった日本酒をつくり、力強く復興の歩みを進める富岡町を発信しています。

富岡町産米使用日本酒「萌の躑躅」・「富岡魂」醸造米生産者の渡辺伸さん

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